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4月18日は発明の日 | 日刊工業新聞 電子版

こうした状況を踏まえ、特許庁はウィズコロナ時代に対応した知財行政に向けて特許法改正案をまとめた。所管する梶山弘志経済産業相は会見で「新型コロナの感染拡大に伴う生活様式や企業行動の変革に対応するため、知的財産制度にかかる手続きのデジタル化、デジタル化の進展に合わせた権利保護の見直し、知的財産制度の基盤強化を図ることを柱にしている」と語った。

手続きのデジタル化に関しては、特許料などの支払い方法で口座振り込みによる予納(印紙予納の廃止)や、窓口でのクレジットカード払いを可能とする措置を盛り込んだ。また現在、特許無効審判などの口頭審理は対面で主張している。法改正ではウィズコロナ時代の非対面ニーズを踏まえ、審判長の判断により当事者らが出頭することなく、ウェブ会議システムを用いて手続きすることを可能にする。

知財制度の基盤強化では審査負担の増大やデジタル化に応じるため、特許料などの料金体系を改定し、減少傾向が続く特許特別会計を改善する。近年、日本企業は案件を厳選して出願する傾向が続いているが、実ビジネスに寄与する特許登録件数は年間17万―18万件程度を維持しており、知財活動の停滞はみられない。イノベーション創出の機運は堅調なことから、料金体系の見直しを通じて同会計の持続的な運営を図り、産業界の知的創造サイクルを後押しする。

他方、イノベーションを収益に結び付けるには、早期の権利化が欠かせない。そこで特許庁は08年からスーパー早期審査制度の試行を開始した。通常、審査請求を行ってから1次審査までの順番待ち期間は約10カ月かかるが、同制度は「実施関連」で「外国関連」に該当する重要案件を対象に1カ月以内に通知する。現在は平均0・6カ月で通知しており、ITなど展開の早い業種の知財戦略を下支えしている。

ベンチャーへの支援も拡充しており、18年度からは「知財アクセラレーションプログラム(IPAS)」を実施している。具体的には、有望なベンチャーを対象に専門家が知財メンタリングチームを組成してハンズオン(伴走型)で助言する。経営コンサルタントや弁理士、弁護士らが連携することで、最適なビジネスモデルの構築と、そのモデルに合致した知財戦略を策定する。

一方、海外での早期権利化については「特許審査ハイウェイ(PPH)」の取り組みを拡大している。ある特許庁が特許可能と判断した場合、この当局の審査結果を他方の国・地域の特許当局が活用して審査を迅速に行う仕組みだ。例えば米国でPPHを申請した場合、審査待ち期間が通常の出願に比べて約60%短縮した。日本企業は「知財に関するグローバルポートフォリオが構築しやすくなった」(特許庁関係者)という。

ウィズコロナ時代における知財行政の変革が期待される。